第3回四国建築賞2018
趣旨
 建築家は、その業務において文化を継承、創造し、自然環境をまもり、 安全で快適な環境つくりを目指し、人々の幸福と社会文化の形成に寄与しなければなりません。 JIA四国支部ではJIAの建築家憲章の理念に基づき、四国4県に造られた 建築作品、群、あるいは活動において、特に4県それぞれの四国らしさ、 すなわち風土性、社会性、歴史性、文化的文脈が受け継がれ、昇華されたものを顕彰する目的で四国建築賞の制度を設置しました。本賞は、JIA会員のみならず、優れた建築文化や環境形成、地域の発展に寄与した建築作品を設計し、地域活動を展開されている建築家、個人、団体を幅広く募集、顕彰いたします。

応募対象
2010年1月1日〜2020年3月31日 四国内に完成した建物または活動
応募登録期間
2020年5月 1 日 〜 6 月 30日
趣旨
建築部門
審査員長
古谷 誠章氏(早稲田大学教授 / 有限会社ナスカ 代表取締役)
審査員
田處 博昭氏 (日本建築学会会員)
審査員
多田 善昭氏 (日本建築家協会会員)
審査補佐
各地域会本委員会委員 1名

総評

 今年で4回目のJIA 四国建築賞の審査を行いました。コロナ禍の中、また台風9 号と10 号の影響を受ける中、その合間を縫って今回は一般部門と住宅部門、合わせて9作品を3 日間かけて見てまわりました。一次審査から二次審査と四国支部の皆さんには、困難な状況の中で大変お世話になり、本当にありがとうございました。
 応募作品は大規模の公的な施設から小さな木造の改修まで、文字通り多種多様なものがあり、また四国各県の風土の違いを感じさせるものも多く、とても楽しく拝見しました。四国は小さいながらも太平洋側と瀬戸内側では極端に気候も違い、豊後水道側と紀伊水道側でも雰囲気が異なります。今回残念ながら香川県の作品が二次審査に残りませんでしたが、代わりに丸亀の多田善昭さんが審査員に加わって、行く先々で川の水位の違いなどの話題に花が咲きました。
 現地に赴いた9作品のうち7件が木造、さらに他1件にも地場産材が活用されていて、結果としてはかなり木や木質のデザインに優れたものが多かったと言えます。それも近年の四国建築賞ならではの特徴と言えるのではないでしょうか。全国的にも公共建築物の木造、木質化が図られる中、四国の建築が世に先駆けて発信していける要素でもあると思います。
 改修の作品も2件あり、一方が小さな納屋をリビングルームに、他方が大型の商業施設を複合文化施設へと改修する、規模も種類も対照的なものでした。小さな旅館の離れも、いわば界隈のリノベーションとも言えるもので、これも全国各地で近年取り組まれている傾向に共通するいずれも示唆に富んだものでした。
 非木造では唯一のS R C造新築の大型公共施設作品は、計画前段階からの市民の熱心な協働など、市民が利用する現代の複合文化施設の範を示すものとなっていました。
 このように多様な作品の中から一点の大賞作品を選ぶと言うのは、なかなか難しいものではありましたが、甲乙つけがたい中で、現代に活かす木造の構法を模索し、ディテールも徹底的に突き詰めた上で、見事なデザインに結実させた《小さな石場建ての家》を今年の大賞に選定することとしました。詳細は作品講評に譲りますが、優秀賞や佳作の作品も含めてそれぞれに独創性があり、提案性に優れていたと感じました。今後の一層のご活躍を祈念いたします。
講評
 応募は、一般15 件・住宅7 件で、総数22 件でした。
建築賞の趣旨書には、「特に、四国4 県それぞれの四国らしい」作品とあります。『四国らしい』とは、幅の広い語彙で、とまどいもあります。が、応募作品の中には、手慣れた手さばきで「スッキリ使立てられた( 狭義の) 近代建築」と思しき作品も散見されました。
 趣旨書は、続けて『社会性、歴史性、文化的文脈が受け継がれ、昇華されたもの』とあります。今回、前回までは応募の無かった用途変更に伴う作品が、3 件ありました。旧商家の建築群を多用途に改修するもの。商業施設をホールに改修するもの。住宅の納屋を住宅に改修するもの。以上、改修方法、用途等、三者三様でした。
 前回1 件だったC L T 壁構造が、2 件となりました。日本住宅・木造技術センターの機関紙「住宅と木材」で今年度、特集がありました。応募が増えるかも?
 その他は、大小様々ですが木造軸組工法でした。四国は木と言えば針葉樹( 杉・桧) を使用します。針葉樹の木組は、弱点の割列を防止し、バネとなるめり込を多様する構成となります。すなわち木組
は、柱、桁、梁、及び二次部材の接点をすべて下部材に乗せ掛けし、各々の端に余長を設けて、割列を防止します。住宅等の小規模なものでは、部材成も小さく徹底されていない様に感じました。
審査経過レポート
 四国建築賞も第4回を迎え、一般建築15作品、住宅作品7作品がノミネート、7月29日徳島県シビックセンターに於いて応募者参加セッションと公開審査会を行い、現地審査対象作品を一般建築部門6作品、住宅部門3作品に選定。9月3日から5日と三日間にわたって現地審査を行った。賞の趣旨に基づいた厳選な審査の結果、大賞1作品、優秀賞3作品、佳作5作品がそれぞれ受賞した。いずれの作品もこの賞の趣旨が反映されたものであることを確信し、四国四県それぞれ地域に根ざしながら今後現れる建築の指標になれば幸いである。
審査結果

大賞 小さな石場建ての家
大賞 小さな石場建ての家

撮影:米津光

所在地
徳島県徳島市
用途
住宅
構造
木造
敷地面積
266.25m2
延床面積
76.68m2
施工
宮内建築 / 長田工務店
竣工年月
2019年 12月
設計主旨

 徳島県は降水量が多く、県土の76%を占める山林は急峻であるため、そういった地域性に適したスギの長伐期林業によって治山治水を行ってきた。
川上に目をやり、山のありように木材の使い方を合わせるデザインを川下で取組むことによって、山の循環の一部としての土着木造建築を目指した。
 切り旬を守って伐採した木を葉枯らし乾燥させ、水分や応力をゆっくり抜き、色、艶、香りなどスギ本来の良さを生かし、大切に住み継いで「未来の古民家」となるよう「古美(ふるび)る)」自然素材で構成した。こういう建築をつくることは、川上での選木、造材、木取りなどの林業技術や川下での木を読み、継手・仕口を加工する大工技術などが要求されるので、人材育成や技術、文化の継承につながる。
 構造的特徴として、耐力壁は貫と土壁でどこかが特別に強いというのではなく、継手・仕口が全部寄り集まって「総持ち」になっている。また、木組の「めりこみ」や足元をフリーにした石場建てで柳の木のような「柔」構造になっている。そしてなにより、大工の手刻みによる木の架構が内部空間に秩序と安心感を与えてくれる。
 百葉箱からヒントを得て地面から約1.5m 上げた高床は湿度、水害対策だけでなく、敷地状況に合った景を得る。伊勢神宮や正倉院、桂離宮などを手本としたプリミティブなカタチに普遍性を求めた。また、外壁のモルタル掻落し仕上げには吉野川の砂を混ぜ合わせて土着の色とした。
 コンパクトでも窮屈さを感じさせないように、水廻りをコアにした行き止まりのない回遊性プランとし、玄関から奥に進むにつれプライバシー度を高め、小さな住宅でも「真・行・草」と空間が「奥ゆかし」く移ろうことを意識した。
 以上、背後にある山の恵みを高歩留まりで利用し、スギという木そのものが持つ物理的、生物的、情緒的な力でもって建築することによって、自ずと日本建築の美学が貫かれた普遍的なものになるのではないだろうか。

講評
地域産のスギ材を生かし、葉枯らしによる天然乾燥をした上で、地域固有の技術を持って家を建て、その利益を再び山に還元することで長伐期林業を再生し、治山治水にも資する「土着木造建築」を目指す構想が素晴らしいと思います。これを題目として唱えるだけでなく自らそれを実践しようという意欲的な取り組みとして高く評価したいと考えます。石場建て、各種ほぞ組、込み栓や楔による継手・仕口など、伝統的な構法を現代化したディテールは圧倒的な説得力をもち、また同時に現代の建築デザインとしても完成されている点が特筆に値します。
外観では1.5m の高床が目を引く以外は、どちらかといえば一見素っ気なく寡黙な表情に見えますが、内部に入ると一転して非常に濃密で、重厚さと明るさが混在する豊かな空間に仕上がっており、しかもそれが人を寛がせて、まったく圧迫感を感じさせないことが秀逸です。まさに四国建築賞大賞にふさわしい作品だと思います。
―古谷 誠章氏

「未来の古民家」を目指し、筋交いや接合金具を使用せず、「古美る」自然素材によって、木と土…光と影、そして風との共生を実現している。内部空間は、横架材より上部を軽やかに感じさせるため、面戸部から自然光を採り入れる工夫がなされていると感じ、人工照明を消してその効果を確認した。それぞれの部材と空間が助け合うことで、健やかに楽しく暮らし続けることを可能にした作品である。小舞を編み上げた状態の姿を記録するため一旦足場を解体した行為は、一次審査時には建築家のエゴでないか?とも感じられたが、実際に訪れてみて、この姿を記憶に残すことは建築家や施工関係者など「ものをつくる人たちの想い」の結集であり、皆が望んだことであったのだと感じ取れた。この手法・構法の次の作品がどの様な展開から生み出されるか、楽しみである。
―多田 善昭氏

優秀賞 一般建築部門 美馬旅館はなれ 木のホテル
優秀賞 一般建築部門 美馬旅館はなれ 木のホテル

撮影:川辺明伸

所在地
高知県高岡郡四万十町
用途
宿泊施設
構造
木造
敷地面積
351.37m2
延床面積
163.02m2
施工
有限会社 勇工務店
竣工年月
2018年 11月
設計主旨

 明治24 年創業の老舗旅館の別館として計画されました。
町内にはホテル形式の宿泊施設がないため、現代のニーズに対応した個室形式で建てられた木造旅館です。
 敷地は窪川駅から三十七番札所岩本寺に向かう遍路道、参道沿いに位置し窪川街分の歴史を物語る景観構成要素である建物が点在する街区にありますが、空き家が目立ち始め人通りが少なくなっています。
 クライアントの地元街並みへの深い思い入れや地域に賑わいを取り戻したいとの思いから、空き家2 軒分跡地に自然と街並みのスカイラインを意識するなど景観を損なわないよう配慮して建てられました。
 国道沿いに建つ本館はL 型に別館前の参道に繋がっており、別館建設時に施設全体計画として両館で利用するフロントや食堂のリニューアルも行われ、お遍路さんと別館に宿泊するビジネス客の交流の場ともなっています。
 また別館に先立ち建設された住居棟はフロント・食堂へのアプローチに面するため格子塀やアルミ製の外掛簾などを設え旅館の顔作りを行っています。
 町内で産出される四万十川流域のヒノキは良質で脂分が多く独特の赤みと香りが高く評価され「四万十ヒノキ」としてブランド化と利用促進・PR 活動が行われています。
 構造材や内外仕上材だけでなくホールの什器、客室の家具は町内業者と協働製作するなど四万十ヒノキを多用し、多くの人がその良さを体感し、地域の活性化にも寄与する施設づくりを目指しました。
 単独で使うと甘ったるい表情になりがちなヒノキは鉄・麻・玄昌石等の異素材と組み合わせメリハリを、また漆喰・和紙・杉などの地場産材を織り交ぜバランスに配慮しました。
 道路に面したホール開口部は高知県内で開発された開口耐力壁「壁ラーメン」構造を採用し、耐力を確保した上で開放的で内外の様子が伺える空間を実現し、宿泊者やお遍路さんのおもてなしの場として、夜間はホールから漏れ出す光で行灯の様に参道を明るく照らしてくれています。

講評
四万十町窪川の37 番札所の参道沿い、古い家並みが残る一角に建てられた木造の小さな旅館で、向かいの老舗旅館の離れとして建てられています。主屋の旅館は主に遍路宿として機能していますが、近年はビジネス客や一般の観光客も増えて、その需要に応えるために企画されました。食堂が主屋にあることで両者の交流にもつながり、建物の表にも人の行き来が生まれ、界隈に人の気配を生み出す素晴らしいアイディアです。
しっかりした木造の造りで端正な気品を感じさせますが、道沿いの壁面では高知で開発された「開口つき耐震壁」を用いて垂れ壁・腰壁部分を耐震要素に、目通りの中間部を開口として視線を抜くなど、新たな技法も積極的に取り入れています。その開口部が奏功して、通りを行く人々とラウンジで寛ぐ人が視線をかわすこともできます。まさに古い宿場町の町屋にある「ミセ」の現代的再現とも言えます。今後も計画が少しずつ周囲に展開されるようで、建物単体ではなくエリア全体の段階的なリノベーションにつながるとても示唆的な取り組みだと思います。
―古谷 誠章氏

優秀賞 一般建築部門 北川村あったかふれあいセンター「ゆずの花」
優秀賞 一般建築部門 北川村あったかふれあいセンター「ゆずの花」
所在地
高知県安芸郡北川村
用途
簡易宿泊所
構造
軸組工法+CLT
敷地面積
872.70m2
延床面積
442.86m2
施工
有限会社 芝原建設
竣工年月
2019年 3月
設計主旨

 高知県北川村、ゆずの香りひろがる中山間に整備された、地域コミュニティ機能をもつ簡易宿泊施設(準耐火建築物)である。
 外観は、この東部地域の風景にみられる石ぐろ塀、瓦屋根、土佐漆喰鎧壁仕上という台風常習で築かれた蔵建築の構成要素を有しながら、中央テラス面は一転し、木組とガラスで視線にひろがりをもたせ、子どもから大人まで誰もが入りやすい、地域にひらかれたコミュニティの醸成を意識した空間とする。
 建物は9.5m同スパンの在来とCLTの二種類の屋根架構で構成。
CLT150mm は下面燃えしろ設計を行い、上弦材・下弦材と異なる勾配で生まれる頂部で三角形を作り、左右千鳥配置させることで板梁の目透かしとした。
各々CLTを切欠くことで織りなす木板は、反復による施工性がよく工期縮減となり、一見屋根に使うことは不合理に思える重たいCLTが、まるで北川村の山々の畝のように軽やかな意匠構造美となり、CLTでしかできない新しい木造表現となった。

講評
「いしぐろ塀」は道路と敷地の歪みを活かし、利用者を守る役割を感じさせる。安心感を与えるどっしりとした柱に囲まれた「ひろば」は、利活用企画が生まれやすい解放感を持っている。さらにその解放感を強調する役割を「土佐しっくい」の妻壁が担っていると感じた。一次審査では押さえつけられるような重たさを感じていたC L T の屋根は、伸びやかさや軽やかさを感じさせる、隙間を持たせた組み方であった。また在来の屋根の、力の流れを表現した方杖も圧巻であった。室内環境は、「あったかふれあいセンター」の名の通り、照明も床下輻射熱式冷暖房の空調も木の持つ触感を生かし、季節や昼夜を問わず、利活用する人たちを心地良く支えている。捩れや割れの生じ難いアセチル化木製ルーバーなどの配慮も見逃せない。
―多田 善昭氏

優秀賞 一般建築部門 「だんだん」保内児童センター・保内保育所
優秀賞 一般建築部門 「だんだん」保内児童センター・保内保育所

撮影:鈴木研一

所在地
愛媛県八幡浜市
用途
児童センター、保育所
構造
木造
敷地面積
児童センター 2,379.63m2
保育所  3,058.12m2
延床面積
児童センター 735.31m2
保育所  1,341.00m2
施工
児童センター 小西建設 株式会社
保育所 堀田建設 株式会社
竣工年月
2019年 2月
設計主旨

 愛媛県西端に位置する八幡浜市は漁業や水産加工業が盛んな港町で「耕して天に至る」と言われる蜜柑の段々畑が山全体を覆っています。市は中心街から少し離れた保内地区に老朽化した3つの公立保育所を統合して220名の保育所とし、地域より要望のあった児童センターを併設して子育て支援施設とする計画を行いました。本計画の設計競技において、私達は子育て経験や子育て専門家の意見を元に「子どもの主体的な育ちを見守る」ことを計画理念とし、一人親や核家族の増加、少子化による親子の孤立化を避けるため、訪れやすく、安心が得られ、地域に見守られる子育て施設の提案を行いました。全体計画は安心な環境で子どもが自ら活動を内外に広げられるように両施設を平屋とし、同敷地内で0歳~18歳までの子どもが一緒に活動できるメリットを生かすため、ゾーニングは北側を低年齢、中央を交流、南側を高年齢とすることで市施設の中心にある交流ゾーンから全体を見渡しやすく、年齢に合わせた活動が守られながら異年齢交流しやすい空間としています。地域の風土を取り込むため、風や光と共に豊かな自然を内部に取り込む日土小学校のハイサイド連窓を受け継ぎ、施設全体に展開することで段々畑の風景に沿う「段々屋根の子育て施設」としました。段々屋根は大小様々なスケールの内部空間を生み、多様な子育ての空間利用を可能にします。段状に分節された透過性の高い空間と最大12mの無柱空間はジョイスト梁やブレース金物を使用した燃え代設計による木造金物工法により実現し、木構造の現しや内外に国産材のヒノキとスギを使用した木質空間は親子の五感を育みます。開所後は交流広場で市民が子育て行事に参加したり、児童センターが積極的に高齢者と子どもの交流行事を行うことで親子交流だけでなく多世代交流が促進し、本施設が地域の触れ合いのプラットフォームとなっています。

講評
送迎者の動線計画(駐車場計画)を含む各施設の機能別配置計画(つながり計画)が明解であり、且つ子供たちの言動を補加している。
その効果を更に安定させる設えとして、子供たちの目の高さを常に意識した天井の高さ、ハイサイドからの光と風の動き、深い庇に守られたデッキなどが有効に機能している。現代の縦割り規制などが優先される状況では簡単なことではないが、松村正恒氏が常に追い求めていたと思われる「機能別空間の明確なテーマから生み出される空間表現」(主役は利用者、ここでは子供)を、深く追い求めて頂きたかった。日土小学校の川に張り出したデッキのような空間の創造を例に挙げれば、庇も付けられない、硬いコンクリートで舗装されている交流広場については、諸規定等の規制を打開して欲しいと感じる。
―多田 善昭氏


佳作 住宅部門 ささなや
佳作 住宅部門 ささなや

撮影:米津光

所在地
徳島県名東郡佐那河内村
用途
住宅
構造
木造
敷地面積
553.43m2
延床面積
122.74m2
施工
株式会社 水本工務店
竣工年月
2019年 3月
講評
徳島市街から車で30 分足らずで、この愛らしい小さな納屋の建つ川のほとりに辿り着きます。しかしたったそれだけの距離とは思えないほどに、目の前でヤマメを釣り、畑の野菜や果樹を育てる環境を発見して、そこに住み着こうとした発想に心を動かされます。こんなに優しい里の幸せな住まいが手に入るのは、やはり四国ならではのことかも知れません。
納屋の土壁を落として間柱と貫だけを活かしたガラス壁は、元のスケール感を残しつつ庭に繋がる透明な開放感を生み出しています。ヴォールト天井の二階も個性的で、不思議な広がりを感じさせます。この可能性を見抜いた建築家の眼力と、この地に移住するに至った決意に敬服しました。
―古谷 誠章氏

佳作 一般建築部門 美馬市地域交流センター ミライズ
佳作 一般建築部門 美馬市地域交流センター ミライズ

撮影:(株) エスエス大阪支店

所在地
徳島県美馬市
用途
図書館、劇場、保育所、店舗等
構造
鉄筋コンクリート造一部鉄骨造
敷地面積
12,540.60m2
延床面積
23,342.36m2
施工
五洋建設 株式会社 四国支店
竣工年月
2018年 2月
講評
うだつの町並みを強く意識し、調和を求めて開業した大型民間商業施設を、33 年の月日を経て「利用者が主役となる施設」に再生させたこのプロジェクトは、行政(発注者)と設計者がお互いの垣根を超えて知恵を出し合い、成し遂げたものであると感じる。
8m グリッドの柱を覆う「ハコとカベ」の設えは、「人とモノを繋ぐ」機能をもたせた空間構成を築き上げる役割を果たしている。また地下駐車場を取り込んで造られたホールは、構造家・設備設計者のエネルギーが感じられた。
―多田 善昭氏

佳作 一般建築部門 おひさま保育園
佳作 一般建築部門 おひさま保育園

撮影:上田宏

所在地
高知県須崎市
用途
保育所
構造
木造
敷地面積
9,946.10m2
延床面積
1,910.28m2
施工
株式会社 矢野建設
株式会社 オー・ティ・エス
有限会社 須崎建工
竣工年月
2020年 3月
講評
須崎市の高台に建つ定員190 人の大きな保育園の計画です。予想される津波のリスクを回避するよう高台に計画されたため、送迎のための広い駐車場との関係と、子どもたちの身体スケールに合わせた空間性を工夫することが大きなテーマだったと思われます。すべて平屋でのびのびと計画されたロの字型の平面が、結果として子どもにとって親しみやすい中庭を生み、大規模造成を感じさせない良好な園舎の環境を形づくっています。簡潔で大仰さのない木造架構も好ましく感じました。
―古谷 誠章氏

佳作 住宅部門 風と水の間の家
佳作 住宅部門 風と水の間の家

撮影:DAICI ANO

所在地
愛媛県
用途
住宅
構造
木造
敷地面積
379.30m2
延床面積
70.42m2
施工
株式会社 川下建設
竣工年月
2019年 11月
講評
変形した末広がりの難しい敷地の隅々まで、地・水・風の利…固有性を活かした暮らしのスタイルを築くための“ 機能”を持たせている。収納から水廻り(浴室・洗面脱衣・トイレ)の空間を勾配屋根で覆うことで、居間から廊下、寝室までの空間の一体感をさらに強調させている。透けた塀は、建築家と施主の想いの重なりが生み出した近隣への優しさにあふれているが、欲を言えば、積極的な近隣とのつながり方をもう少し生み出せるのではないかとも感じた。
―多田 善昭氏

佳作 一般建築部門 伊予市文化交流センター IYO夢みらい館
佳作 一般建築部門 伊予市文化交流センター IYO夢みらい館

撮影:髙橋菜生写真事務所 髙橋菜生

所在地
愛媛県伊予市
用途
文化複合施設
(図書館・文化ホール・地域交流館)
構造
鉄骨鉄筋コンクリート造一部鉄骨造
敷地面積
7,428.30m2
延床面積
5,867.51m2
施工
株式会社 合田工務店
竣工年月
2020年 2月
講評
JR 予讃線に接して建つ新たな文化交流拠点で、敷地輪郭も不定形で周囲の道路には高低差もあり、しかも周囲は低層の住宅街も迫るというとても計画の難しい立地です。しかしそれを逆手に取るように大小様々なボリュームを配置して、それを大屋根で一つに覆うという、あたかも住民が一つ屋根の下に集い多様な活動を繰り広げる、今日の複合文化施設の果たすべき役割をそのまま体現した造形に結びつけた点に、設計者の力量を感じます。特にホールと図書館が融合し、図書館の「出店」がモールに並ぶ光景は楽しいです。
―多田 善昭氏