建築巡礼、作品との対話

私たちの建築巡礼四国88カ所は弘法大師が修行し悟りを開いた足跡をたどる
四国霊場88カ所にちなんで構想された。
人々は霊場を巡りつつ、今もこの四国の地で同行二人、大師と共に御堂の佇まいに
心を癒し自然に包まれ安らぎそして精神的な力を得て、明日を生きるための活力としている。
驚かれるかもしれないが、このような霊場のもつ精神的な力は私たち建築家が生み出す
建築作品にも宿っている。
明治時代の浄水場、入念に積まれた煉瓦の壁に、当時の人々の使命感が伝わって
こないだろうか。
岬にそびえる灯台、風雨に耐えて建つ姿に、共感を覚え励まされないだろうか。
山間に佇む茶屋、使い込まれた造作に、神と自然と村人が集う生活を見ないだろうか。
コンクリート打放しの庁舎、見事に打たれた壁面に、建築家と技術者の英知と努力を
感じないだろうか。
明治以降の建築作品の中から私たちは、このような人々に感動を与える建築作品を探し出し
厳正な選考を経て、88の作品を取り上げガイドブックとした。
そこには木造の小さな御堂から、コンクリートの高層建築まで実に様々な建築作品が
含まれているがいずれも訪れる人々に、精神性を感じさせてくれる現代の建築札所である。
このガイドブックは、これからの建築作品と出会うための案内人でありこれからの
建築作品との対話を助ける同行人だ。
四国建築88カ所を巡ることにより多くの人々が建築作品のささやきに耳を傾け
それが心の支えになることを、また多くの建築に携わる人々が建築作品の語りかけを
自らの糧とするよう祈っている。

1998年3月9日
山本忠司
建築巡礼四国88カ所特別委員会委員長
選考経過

建築巡礼四国88カ所は、四国霊場88カ所巡りにちなんで、四国の建築作品を古いものも、
新しいものも同じテーブルに乗せて、広く社会に問いかけ、建築というものに
感心を持ってもらおう、また、四国に居るわれわれももう一度この地域の建築や
風土的個性を見直してみようという考え方のもとにスタートした企画でした。

1995年12月、各県三人のメンバーにより構成された建築巡礼四国88カ所特別委員会が
設けられ、作品の調査と拾い出しを始めました。
四国のすべての建築作品を対象としたわけですが、すでに文化財としての
価値の定まっている江戸期以前の建築作品と、明治以降の近代・現代建築を、
同基準で比較することは難しく、まず江戸期以前の文化財は「別格」として取り上げ、
88カ所作品には含めないことにしました。つまり近代以降の88作品を
選ぶことになったわけです。

選考基準を定めた上で、各県毎に委員会メンバーを含めたJIAメンバーで
作品の絞り込みを進め、1996年8月の委員会会議には各県から44作品、
4県で合計176作品が集められました。同年末、四国の中央にあたる徳島県池田町で
1泊2日をかけて作品の内容確認と、さらなる絞り込みをおこないましたが、
優れた作品が多く、最終的に88作品が決まるのは1997年4月の委員会会議となりました。
絞り込みの課程で、非常にユニークな建築作品や建築物、ランドスセープ等が見出され、
88作品におさまりきらないこれらの「おもしろ建築」は「番外」として
取上げることとしました。また88作品は、竣工から5年以上経過し、
ほぼ評価が定着した作品に限ったため、1992年以降に竣工した作品は
取上げていないのですが、特に全国的な評価を受けた優れた作品については
「別枠」として取上げました。

今回の選考で、特に明治以降昭和戦前の間につくられたすぐれた建築作品が
見出されましたが、88作品を取上げるという制約上、多くを落とさざるをえなかったのは
残念です。今後何等かの形でまとめておくことが必要かと思います。

資料収集の過程でご協力をいただきました、各県及び市町村の教育委員会をはじめ
多くの団体や個人の皆さんに感謝します。

「建築巡礼四国88カ所」という名称は他の地域でも「建築巡礼」が企画されることを
期待して名付けたものです。日本各地に建築巡礼の輪が広がるのを期待しています。